
ベンチプレス大会の試技選択では、第1試技を確実に成功させ、第2試技で当日の記録を固め、第3試技で更新・順位・挑戦の目的に合わせるのが基本です。ジムで一度上がった重量をそのまま第1試技に置くと、合図、ポーズ、緊張、ラックアップの違いによって記録なしに終わる可能性があります。
大会で狙うべきなのは「最も重い1回」だけではありません。3回の試技を通じて、ルールに沿った成功記録を残すことです。初出場ならまず公認記録を得ること、記録更新を狙うなら第3試技まで勝負を残すことを優先しましょう。
試技選択の基本は「1本目で記録、2本目で本命、3本目で目的達成」
競技ベンチプレスの試技は3回です。1本でも成功すれば、その日の有効記録になります。反対に、3回とも失敗すれば記録は残りません。したがって、3回すべてを限界重量にするより、役割を分けて考えるほうが組み立てやすくなります。
| 試技 | 主な役割 | 重量を決める基準 |
|---|---|---|
| 第1試技 | 有効記録の確保 | 合図・ポーズ込みでも再現性が高い重量 |
| 第2試技 | 当日の本命記録 | 事前に計画した現実的な目標重量 |
| 第3試技 | 自己ベスト・順位・標準記録への挑戦 | 第2試技の速さ、疲労感、順位状況を踏まえて判断 |
ただし、これは固定ルールではありません。第1試技が思ったより重い日なら、第2試技を小さく刻んで立て直す判断が必要です。逆に第2試技が余裕を持って成功したなら、第3試技で予定より上を狙える場合もあります。
第1試技は「ジムでのMAX」ではなく「大会仕様で成功できる重量」にする
第1試技の目的は、気持ちよく自己ベストを狙うことではなく、先に記録を作ることです。目安としては、直近の大会仕様に近い練習で、止めを入れて安定して扱えている重量から選びます。
- スタート、プレス、ラックの合図を待っても失敗しにくい
- 胸で静止したあとも、切り返しでフォームが乱れにくい
- ラックアップ後に肩甲骨、臀部、足の位置を保ちやすい
- アップの段階で違和感や極端な重さを感じなかった
例えば、ジムでは100kgをタッチ&ゴーで余裕を持って挙げられても、試合形式のポーズベンチで95kgに不安があるなら、第1試技を100kgにする根拠は弱くなります。大会に近い静止の練習を普段から入れておくと、開始重量の精度が上がります。ポーズの長さや重量設定は、ポーズベンチプレスの効果と重量設定も参考にしてください。
初出場なら「軽すぎるかも」と感じる重量でも問題ない
初めての大会では、会場の空気、検量後の食事、待機時間、審判の合図、公式台の感触など、普段と異なる要素が重なります。第1試技が軽めに見えても、成功して流れを作る価値は大きいです。
特に、ラックアップを自力で行うか補助者に出してもらうか、ラックの高さが普段と合うかは試技の安定性に影響します。事前に自分の設定を言語化し、ウォームアップ時にも確認しましょう。ラックアップが安定するラック高・セーフティ設定で、普段の基準を整理しておくと役立ちます。
第2試技は「今日の記録」を決める最重要セット
第2試技は、多くの選手にとって当日の最終記録になりやすい試技です。第1試技の成功に安心して大きく跳びすぎると、第3試技まで失敗して記録を伸ばせないことがあります。
設定では、次の3点を確認します。
- 第1試技は、バーが胸から離れた直後に止まりそうな重さではなかったか
- ラックアップからラックまで、いつもの手順を再現できていたか
- 胸でのタッチ位置、足の踏ん張り、臀部の接地に乱れはなかったか
第1試技が成功でも、挙上が遅い、タッチ位置がずれた、合図を焦ったといった課題があれば、第2試技の上げ幅を抑える選択が合理的です。反対に、余裕があり、フォームも大会仕様で揃っていたなら、計画どおり本命重量へ進めます。
試技間で確認すべきフォームを増やしすぎると、かえって動きが散漫になります。タッチポイントが毎回ずれる選手は、重量だけでなく下ろす位置の再現性も見直しましょう。ベンチプレスのタッチポイントを決めるチェック方法を使い、アップから試技まで同じ目印を持つことが大切です。
第3試技は「自己ベスト」「順位」「成功率」のどれを優先するか決める
第3試技は挑戦の場ですが、何を達成したいかで適切な重量は変わります。申請前に目的をひとつに絞ると、感情で重量を決めにくくなります。
| 目的 | 第3試技の考え方 |
|---|---|
| 自己ベスト更新 | 第2試技の挙上速度が保てていれば、更新に必要な最小限の上積みを検討する |
| 順位を守る | 対戦相手の成功重量と残り試技を確認し、必要な重量を選ぶ |
| 標準記録を狙う | 必要重量を明確にし、第2試技で届くのか、第3試技勝負にするのかを事前に決める |
| 大会経験を積む | 成功率を優先し、3本成功の再現性を作る |
自己ベスト狙いでも、大幅なジャンプが常に悪いわけではありません。ただし、その重量に挑戦する根拠は必要です。「会場が盛り上がっているから」「第2試技が成功したから」だけではなく、アップから第2試技までの挙上感覚、当日のコンディション、過去に近い重量を成功させた経験を合わせて考えましょう。

試技重量は大会前に3パターン作っておく
当日に初めて試技表を考えると、アップの感触や周囲の記録に振り回されやすくなります。大会の1〜2週間前までに、少なくとも次の3パターンをメモしておくと判断が速くなります。
- 標準プラン:想定どおりに動いた日の第1〜第3試技
- 慎重プラン:アップが重い日、睡眠や移動の影響がある日の組み方
- 好調プラン:第2試技まで明らかに余裕がある場合の第3試技候補
例として、目標記録が120kgであれば、「第1試技110kg・第2試技117.5kg・第3試技120kg」というように、各試技の役割が分かる並びにします。これはあくまで一例であり、適切な刻み幅は普段の練習精度、使用できるプレート、競技レベルによって変わります。
普段から重い1回とバックオフセットを使っている選手は、その記録を試技選択にも利用できます。トップシングルがどの程度の余裕で成功しているかを残しておくと、開始重量と本命重量を見積もりやすくなります。詳しくはトップシングルとバックオフセットの考え方を確認してください。
重量申請で慌てないための当日チェックリスト
大会では、挙上そのものだけでなく、試技重量の申請を時間内に行うことも重要です。大会ごとに案内や運用が異なるため、受付時やテクニカルミーティングで必ず確認してください。
- 第1試技の申請重量を、検量前から決めておく
- 第2・第3試技の候補を複数メモしておく
- コーチや補助者がいる場合は、判断する人をあらかじめ決める
- 重量の単位と使用可能な刻みを確認する
- 申請後の変更可否、申請時間、呼び出し順を主催者案内で確認する
- 試技直後は感想より先に、成功・失敗の原因を短く共有する
失敗した直後は「次は絶対に上げる」と重さを据え置きたくなります。しかし、失敗の原因が筋力不足ではなく、合図の聞き漏らし、足の位置、タッチポイント、ラックアップの乱れであることもあります。映像を確認できる環境なら、次の申請までに一つだけ修正点を選びましょう。
まとめ:3回の試技は、当日の最大重量ではなく戦略で決まる
ベンチプレス大会では、第1試技を成功させることが、その後の挑戦を可能にします。第2試技で当日の記録を作り、第3試技は自己ベスト、順位、標準記録などの目的に合わせて選びましょう。
試技選択の精度を高める近道は、大会直前だけ特別なことをすることではありません。普段からポーズ、ラックアップ、タッチポイントを揃え、重い1回の感覚を記録し続けることです。3本の重量を事前に設計し、当日はコンディションに応じて冷静に微調整できれば、競技ベンチプレスで記録を残せる確率は高まります。
